自衛隊バイクを自分で作ってみた製作日記! ホンダXLR250R偵察用オートバイを作る

子供の頃からの夢だった自衛隊偵察オートバイXL250Sを入手してから約半年あまりが過ぎたある日、またしても唐突として、その決断すべき日がやってきた。偵察オートバイを所有してからは、ほとんど毎日のようにチェックしているヤフーオーク ションに、あの待望の偵察用オートバイが出品がされていた。そう!あの「自衛隊仕様ホンダXLR250R」が個人出品されているのだ。

すべてはふたたび、このページから始まった。

その日がやってきた!自衛隊バイクXLRとの出会い

俺は夢を見ているのかっ?コレは夢なのか??と自分の目を疑い、何度もパソコンの画面に映しだされた偵察用オートバイXLR250Rの情報を食入るように見つめる。それもその筈、膨大な資料や関係者から聞いた話では、完全な状態での自衛隊XLR250Rの入手は不可能に近いのだ。しかし、パソコンモニターに映しだされてる自衛隊バイクは、まさに「自衛隊偵察用オートバイXLR250R」なのである。

毎日、シコシコとヤフーオークションサイトを睨みつけていた努力は無駄ではなかったワケだ!バンザーイ!

こちらで入手レポートをした自衛隊偵察オートバイXL250Sは、初めて入手した偵察オートバイなので愛着が多い。あの無骨なフォルムも大好である。

しかし、日常の足として乗るためのオートバイとしては、ブレーキの効き目が弱く非常に怖い思いをしたり、電圧は6Vしかないので、ウィンカー点灯時にはウィンカーがちゃんと点灯しているのかどうかも判別できない程暗く、警告ホーンなどは「ピィィィ・・・」と2,3秒で音が出なくなるので警笛の意味をなしてはいない。

数々の問題点はあるのだが、一番の問題点が保守部品(パーツ)のほとんどが欠品となってしまっているので入手が非常に難しい点である。日常の足として偵察オートバイを利用するには、保守部品の入手困難は安全な公道走行にとっては致命的な欠陥事項となってしまう。

そうなると、現行型の「XLR250R」か、新しく配備が進む「KLX250」の欲しくなるのは自明の理である。

「欲しい」と強く思うが、「入手が出来ない」と、その可能性の恐ろしいまでの低さを知っている・・・。そんな相いれぬ複雑な思いの中、その妄想が現実として手の届く範囲までやってきたのである。

オタク的状況に例えるとすれば、いつかはラムちゃんが自分の元にやってくると思い続けて15年、待ちに待ったラムちゃんが予定より15年も遅れて空から降りてきた感覚というべきだろうか。

早速、オークションの入札に参加してみるが、まったく入札される気配はない。どうやら、最低落札価格なるものが設定されているようだ。

『なんなんだ!この最低落札価格つーのは!売ってもイイ値段から初めてくれよ!』

と心が声にならない悲痛な叫びを上げる。鬼神の如く追加金額で入札を続けるものの、この目の前のパソコンモニターに映しだされている偵察オートバイXLR250Rは、一向に落札できる気配は無い。どんどんと入札を続けていくと、ついに入札価格は45万円まで跳ね上がってしまっている。が、「最低落札価格に達していません」と無常や表記が出たままである。

「自衛隊でも新車の調達価格でも60万円ですよ・・・このあたりでの引き際が肝要かと・・」

と、隣のデスクにいる MATT氏の諸葛孔明バリのクールなご意見を受けてなんとか冷静さを取り戻す。危ない危ない、45万円はさすがに行き過ぎた。こんな伝票を経理に回せば、無視されて自腹が確定しまう。いや、あるいは自腹でも問題はないか・・・などと自分自身と格闘するも、ひとまずは気持ちを落ち着かせた。しかし、物欲の塊である私がこんな事で諦めれる訳でもなく、

「俺の力はここまでかぁ!うぉーどうしてもXLRがほしいー!やっぱ12Vの電装じゃなきゃヤダー」

やはりどうしても諦める事ができない。自衛隊偵察オートバイのXLR250Rは入手している人が世の中にはいる・・・・。そしてそれが目の前に売りに出ているが、予算的には買える金額ではない・・・。しかも自分の中の物欲番長はすでに目覚めてしまっている・・・。そこで導き出された結論は、

「もうこうなったら、自分で陸自(風)偵察用オートバイXLR250Rを作るしかない!」

そうして、バイク弄りも殆どしたことのない、バイクについてスーパー素人の癖にとんでもない目標「自衛隊バイクを作る」という目標を実行に移す事になった。2004年10月、この日から自衛隊仕様のXLR250Rを自らの手で製作するという、油と塗料まみれの長いストーリーが始まる事になる。

まずは偵察用オートバイについての情報収集と物資調達

早速、自衛隊バイクXLR250Rの情報収集をスタートすることにした。インターネットをフル活用して「自衛隊オートバイ」や「偵察バイク」、「陸自 ホンダ」などのキーワードをかたっぱしから検索してみた。偵察用オートバイXL250Sの レポート時の検索でも情報の少なさに泣かされたが、今回は更に情報の少なさに泣かされる事になる。検索エンジンでもヒットする情報が少なく、有力な情報は2〜3 ページ程度しかヒットしてこない(2005年当時の状況です。2020年現在では自衛隊の活躍に伴い、とても数多くの情報が検索でヒットします。)。

数少なくヒットした情報でも、自衛隊の公式サイトの情報であったり、新聞記事のアーカイブであったり、自衛隊バイクの作成に参考になる情報は殆どといっていい見当たらなかった。それでも根気よく検索を続けていくと、COMBAT.CHのコンテンツであるフォーラムページがヒットした。書き込み内容には「自衛隊の自衛隊バイクXLR250Rがコンバットマガジンの広告で売りに出ている」と書き込まれてい る!

早速、近所の商店街の古本屋に出向き、コンバットマガジンの過去2 年のバックナンバーを立ち読みして、自衛隊バイクを販売している広告を探して販見つけ出した。偵察用オートバイの広告を出していたショップは、福島県にある「THE兵舎」というミリタリーショップ。古くから軍用品を中心に販売している、ミリタリー業界に老舗中の老舗だ。早速「THE兵舎」へ電話をして、偵察用オートバイについて問い合わせをしてみた。

お店の人:『ええ、自衛隊バイクの在庫はありますよ』

との事。是非COMBAT.CHにも譲って欲しいと伝えると、

お店の人:『今、コンバットマガジンで偵察バイクXLR250Rのレストアの記事が連載されていますよ。』

と親切に教えてもらった。

日ごろからコンバットマガジンを定期購読していない私は、当然この記事の事を知らなかった。再び近所の古本屋さんへ出向いてコンバットマガジンをチェックすると、自衛隊バイクXLR250Rのレストア記事が確かに連載されている。

「ほんとだ。思いっきり同じコンテンツになってしまうね。しかもこちらが後発になってしまうし・・・」

すでにレストアするにあたっての機材などの注文をしてしまっている以上、二番煎じになってでもこの企画を通すしかない!COMBAT.CHの経理方に非常に暑苦しい想いを熱弁し、渋々ながらも偵察オートバイXLR250Rのレストア記事コンテンツにかかる予算を捻出してくれた。

予算と了解を得た上で、ジャンク状態の自衛隊バイクXLRを販売しているTHE兵舎さんでジャンクパーツを発注。それと同時に、レストアのベースとなる市販車のXLR250R(MD20)をヤフーオークションで落札した。レストアベース車はノーマルの車体だったので55,000円というリーズナブルな価格で入手する事ができた。

続いて、整備するのに必要なXLRサービスマニュアルとパーツリストなども約3,000円程度で入手。レストア作業は夜間に行う事も多くなるので、強力な投光器、レストアベースのバイクをスムーズに解体するのに、エアツールとコンプレッサーも調達。バイクをレストアするために、ドンドンと設備が拡張されていく・・・

「ひょっとしたら、オークションに出ている自衛隊バイクXLR250Rを60万円で譲ってもらった方が安くついたかも知れないな・・・」と、非常に弱気な考えも頭を過ぎる事もあったが、「工具類やパーツ類を全部揃えても60万円には遠く及びませんよ。なにより、ヤフーオークションに出品されている自衛隊バイクも、あくまで”仕様 ”ですからね。自衛隊の実物ではないんですよ!ここまで来たら頑張るしかありませんよ!』と励ましのお言葉頂き、工具とパーツの調達を継続した。ここで、私達がレストアするにあたって調達した工具類を載せておくので参考にしてほしい。

 

名    称
価 格
備  考
エアーコンプレッサー
15800円
エアーツールセット(インパクトレンチなど)
5800円
エアーツール(塗装用)
2300円
夜間作業用投光器
3800円
バイク作業台(バイクリフト)
9800円
工具セット
2500円
特殊なサイズのレンチなど
2400円
紙やすりなど
300円
電動ドリルの刃(9.5mm)
1120円
簡易サンドブラスター
7500円
結局使用していない
トルクレンチ
4500円
溶接機(100V/200V)
12000円

レストア作業を効率よく作業を進めるのには、エアツールは絶対に必要との事だったので調達品目に加えた。エアツールを活用する事で作業時間は大幅に短縮する事が可能になる。知り合いのバイク屋や自動車屋にレストアに際してアドバイスも求めたところ、「いい道具を揃えろ。」との助言を数多く得たので、ホームセンターで売られている安価な工具ではなく、工具専門店で揃えることになった。

特にエアツールは近所のホームセンターでは置いていない場合も非常に多く、在庫があったとしても、型番が古いものが高価であったり、中国製で品質が悪いものが多かったりと 問題が多いように感じた。そこで、エアツールや専用工具類は株式会社ストレートという工具専門店で調達することにした。ここではレストアするのに必要な工具はすべて揃う。ただし、高品質な工具が多い のでお値段もそれなりにしてしまうのが難点だ。

株式会社ストレート(http://www.straight.co.jp/)

自衛隊オートバイの特殊外装部品の調達を開始

2004年10月後半、THE兵舎さんから発注していた偵察用オートバイXLR250Rが到着した。大きな貨物用のパレットに載せられたジャンクパーツは、当然の如く、それは見事にバイクの形をしていない。自衛隊の払い下げ品としての風格を見せ付けてくれる程のジャンクっぷりだ。そのジャンクの塊が乗ったパレットを見てガッカリはしたが、ゼロから自分で組み上げるのだから当然と言えば当然。ここから這い上がるしか道はない!既に高めの工具類も買ってしまってるんだ!と自分に言い聞かせて、まずはひとつひとつのパー ツをチェックする事から始める事にした。

↑ 写真はTHE兵舎から到着したジャンクXLR。これを見た時、どこから手を付けて良いのか解らずに途方に暮れてしまった。レストアの道は険しいと感じた瞬間だった。

■入手できた自衛隊偵察オートバイ用の特殊装備の一部

 

名    称
価 格
備  考
タンク(OD)
程度はよい。利用可
リアフレーム左右(OD)
溶接再生で利用可
エンジンガート(OD)
溶接再生で利用可
ライトガード(OD)
利用可
サイドカバー(OD)
利用可
リアキャリアASSY(OD)
利用可
無線機ホルダーラック(OD)
利用可
シート(Black)
欠損あり。利用可
ホイール前後(OD)
歪みの為、利用不可
フロントブレーキカバー
利用可
マフラー
利用可
エイゾーストパイプ
利用可
ナックルガード左右(OD)
利用可
上記THE兵舎より一括購入
120.000

灯火管制用ランプ
2500
別途購入(新品)
無線機用リモートスイッチ
3100
別途購入(中古品)

フレームは完全に溶断されていて、もとはフレームであったであろう鉄の断片が入っているのみだった。完膚なまでに裁断されたフレーム は、これがバイクであった事を感じさせない程に徹底的に破壊されていた。残念なのは、フレームを溶断する作業の際に飛び散った火花で、多くのパーツは再利用が不可能の状態になっている点だ。偵察用オートバイを作成するにあたって、キモの部分になる特殊外装(アーム類)については、殆どの部分に溶断が入ってはいたが、再溶接する事で再利用できそうな程度の破壊具合だった。

偵察用オートバイXLR250Rには、フレーム本体にリアアームを固定する為のパーツが取り付けられているのだが、リアアームを装着する必要はない民生用のXLRにはこのパーツは溶接されていない。THE兵舎から送られてきたジャンクパーツの中には、このアーム止めとなるパーツと補強用の渡しプレートパーツが残念ながら含まれていなかった。あるいは細切れになってスティールスクラップの中に溶断されたパーツの塊の中にあったのかも知れないが、あったとしてもとても再利用できる状態ではない。これらのアーム用ベース系パーツについては、自作する必要に迫られた。

これだけの自衛隊用パーツ類が揃えば、偵察用オートバイXLR250Rの自作に向けて大きく前進しているぞ!と自分自身を奮い立たせる。レストア作業を今すぐにもスタートしたいが、季節は既に冬。なんだか寒くなってきたのでモチベーションを維持できずに作業はここで一時中断となる。暖かいコタツの中でサービスマニュアルとパーツリストをチェックして、レストア作業を妄想して自衛隊バイク自作への道を歩みだした記念すべき2004年は終わった。

特殊パーツのオーダーメイド

自衛隊バイクのジャンクパーツセットで大半の特殊外装パーツが揃ったが、リアアームのベースとなるパーツとフレーム補強用のプレートについては入手が出来ていない。インターネットを駆使しての入手を試みているが、入手は絶望的だった。そこで、金属加工業者に依頼して、同様のパーツをオン・オフで作成してもらう計画へ変更した。 バイク用のパーツを一つからでも制作してくれるワンオフパーツ業者へ片っ端からメールで問い合わせして見ることにした。

製造してもらう必要があるパーツは2種4点;

  1. リアアーム受け(左・右)
  2. フレーム補強(左・右)

実物の偵察用オートバイXLR250Rはないので、パーツの写真と大まかな寸法で製作加工が可能か問い合わせた所みた。しかし、厚さ3.2mmの鉄板を加工してくれるパーツ屋は殆どなく、 単品発注と判れば優しくお断りをされてしまう・・・。そんな中、加工してくれるワンオフパーツ業者を探し始めて20日くらい経った頃、京都府の桜井工機株式会社から返事のメールを頂いた。こちらが提示した条件で、パーツの制作が可能とのお返事を頂いた。

本来、これらのパーツはプレス加工で製造されているが、今回のレストアに使用するのは、2種4点のみ。これらの数をプレ ス加工するのには、金型製造などの膨大なコストが必要となるので現実的ではない。桜井工機では、そこを溶接加工とハンドメイドで、これらのパーツを再現する提案を頂いた。

左右リアアームのベースとなるパーツとフレーム強度追加用のパーツが再現可能なところまできたが、ここで問題が発生した。これらのパーツの再現は可能だが、やはりきちんと採寸した図面が必要だというのだ。手元には偵察用オートバイXLR250Rはないし、パーツの実物もない・・・・。

考えた結果、なんとか自衛隊に相談して実物を採寸させてもらうのが一番である。そこで近所の自衛隊駐屯地広報課へアポイントメントをとってみる事にした。

自衛隊の人:「今度、駐屯地祭があるので、その時にじっくり見てもらうのはOKです。メジャーなどで計測してもらっても大丈夫ですよ。」

基地祭の当日、自衛隊側の担当者とお話をして、自衛隊バイクをじっくりと撮影させてもらった。担当の自衛官とお話をさせてもらったが、この自衛隊バイクを1/1スケールで作成している最中だと言ったら、「僕なら普通のXLRが欲しいです!」と一言。うん。そのとおりなんだけど、そうじゃないんだな。マニアってのは!

←こちらは自衛隊駐屯地で実物を撮影したもの。プレス加工されているのが分かる。ワンオフパーツ作成では、金型が必要になるプレス加工はコスト的に現実的ではない。
←見様見真似で作った薄いアルミ製のパーツを当ててみて、ワンオフパーツとして発注するための仕様書を制作する。

ワンオフパーツで制作してもらうパーツ部分を細部まで撮影した写真とノギスできつちりと測った実測値をパーツ制作業者に送付。すぐに返信があり、「これであれば制作は可能です」との心温まる返事を頂いた。パーツを作成するにあたって、プレス加工のものをマネして溶接で再現するので、自衛隊のパーツとまったく同じとはいかない。また、民生用フレームに溶接するので、 溶接強度が出来るだけ高くなるように、溶接しろを付けるなど、オリジナルと比べて少し形状変更を加えらる事になった。

これらのパーツの制作期間は約30日の予定だったが、実際には発注から18日で手元に到着。初めて手にしたワンオフパーツはまさに、「職人技」と言わざる得ない非常に良い出来栄。プレス加工の窪みを溶接加工で再現し、厚さ3.2mmもある鉄板にきれいに段差を付ける「細かい作業」が見事に再現されていた。

桜井工機株式会社(http://www.cheric.com/)

ベースとなる民生用XLRの分解とパーツ類の塗装を開始

2005年3月24日。春の陽気と共に外気温が上昇したので、これに比例するようにモチベーションが急上昇、途中で止まっていたレストア作業再開する事にした。まずは民生用XLRを分解する事から、本格的なレストア作業のスタートとなる。

エアツールを初めとする機械工具類を準備していた為に、バイクの分解作業はもの予想以上のものすごい勢いで進んでいく!翌日には、民生用XLRは完全にバラバラになってしまい、各パーツもすべてダンポールの中に納まった。しかし、バイクのレストアや分解などの作業をした事がない素人の私が、犯したミスは以下の2点;

  1. 外したネジはパート毎(ハンドル周りとかブレーキ類)に分けた方がよい。
  2. 分解前に各セクションごとに写真を撮影しておく。(これ結構大事です)

取り外したネジ類を一つの大きなケースに入れてしまっていたので、バイクを組み立てる時には、ノギスでいちいちサイズを測ってから装着するという、恐ろしく地味な作業をする事態に陥ってしまった。パーツリストでサイズを確認して、サイズを測ってからネジを締めるといった作業の為、レストア作業の1/3はネジのサイズ確認という大失態を冒してしまう。

デジカメでの撮影は、分解する前の配線や、エンジン周 、どこの部品がどこに、どう繋がっているかなどの全体図を把握するのに非常に役に立つ。バイクのハンドル周りなんかは、いろんなケーブルが微妙な隙間を通る事が多いので、写真で実物の記録があればスムーズに配線作業をする事が出来る。分解する前にデジカメで一枚撮影しておけば、組み立て時には驚くほど効率的に進める事ができる。

自衛隊バイクのメインカラーである塗料も特別に自作する事にした。自衛隊用のODは、メーカーで「業務用OD」と呼ばれている。これは一般に市販されているものと色合いが異なり、はやりリアルに自衛隊バイクを作るためには、この業務用ODは必要不可欠だ。そこで、溶断された偵察用オートバイのパーツを持ってあっ ちこっちの塗装屋で調色してもらってみたが、いまいち納得のいく色合いにならない・・・。

最終的には、自衛隊へ塗料を納入してる某大手塗料メーカーで、配色番号でカラーオーダーすることで実物と同色を入手する事ができた。このレポート掲載時にアポイントメントをとってみたが、情報公開も拒否されてしまっているので発注先等はここでは非公開情報とさせて頂いている。

桜井工機へ発注した特注パーツが到着するまでにはいささか時間があるので、この間に分解して外した各パーツのクリーニングとフレーム以外のパーツ塗装へ作業を開始した。メインフレームの塗料はがしを行い、小さな部品をひとつひとつクリーニングしていく。手元にあるレストア資料と十分に比べてから、パーツの業務用ODの塗装を施していく。

自衛隊の偵察用オートバイXLR250Rは、エンジン部分がツヤ有り黒で塗装されている。なので、エンジンは同様に黒く塗装した。エンジンはとても高温になるので、耐熱用塗料を使用して塗装しておいた。

リアクッションは、いろいろ資料を調べて見た結果では ODのパターンと黒のパターンと存在してる。自衛隊バイクを自作するにあたっては、一番写真で多く見受けられた黒色のパターンをチョイスして塗装する事に決定。

買った時は白色かった民生用XLRのパーツが、国防色や黒色に塗装されていくのをうっとりと眺める自分がいる・・・・。いかん!いかん!!作業の部屋の換気をしなくては・・・。どうやら作業場にシンナーが充満しているようだ!!

小さいパーツ類を塗装してる間に桜井工機から発注していたパーツが到着。早速フレーム本体に溶接して、メインフレームの塗装を開始する。塗装作業で一番厄介だったのが、このメインフレーム塗装だ。それは、十分に大きな塗装スペースが必要だったからに他ならない。用意できたスペースも十分という訳ではなかったが、作業を進められる程度の広さはなんとか確保できた。しかし、スプレーガンで塗装していく際に、あっちこっちに粉末状の塗料が飛んでしまい後始末が大変なことに・・・。更に壁や床を取れない塗料で汚してしまい、ビルの管理人にこっぴどく叱られる始末である。32歳(当時)にして、これほどこっ酷く叱られるとは、なんとも貴重な体験だった。

メインフレームや小さなパーツの塗装作業には、なんやかんやで約1ヶ月近くの時間を費やして行った。ペーパーを当てたり、傷を埋めたり、特に塗料の着きをよくする為に下地処理は入念に行い、気に入らいところは納得できるまで再塗装を繰り返した。間違いなく、レストア作業の中で一番手間のかかった作業となっている。初めの予想では、自衛隊バイク自体の組み立てや調整に多くの時間が取られると思っていたのだが・・・。

すべての塗装が終わった時点で、5月のゴールデンウイーク期間も終了。結局この年のゴールデンウイーク期間中は、偵察オートバイの塗装作業に掛かりっきりでシンナー中毒者ばりの生活が続いた。

いよいよ自衛隊バイクの組み立てを開始

2005年5月30日。各パーツの塗装が十分に乾いているのを確認して、いよいよ自衛隊バイクXLR250Rの組み立て開始。ここでも民生用XLR分解時と同様に、エアーツールを初めとするわりかし贅沢な工具類に支えられて作業はスムーズに進んだ。

メインフレームにサスペンションと後輪を取り付け、そしてフロントフォークと前輪を取り付ける事でオートバイの骨子が完成。なんとなく偵察用オートバイに見える!

そこから直ぐにエンジンを載せて、ハーネス(電線)の取り付け、テスターで通電チェック を実施する。翌月5日までにはエンジン、エアクリーナー、キャブレターなどのエンジン周り部品の取り付けを無事終了。ここで一度エンジンの始動テストと電装テ ストを実施することにした。キックレバーを力強く3−4回踏み込むと、

 

「ブロゥンンンンッ」

 

と不安定ながらもエンジンが回転を始めた!民生用XLRの完全に分解してから約2ヶ月、一時は「このバイクはもう二度と動かないんじゃないか・・・」と不安に思った時期は何度もあったが、ここでバイクの心臓であるエンジンを再始動させる事に成功した。感動のあまりにその場で小躍りをしてしまう。

電装関連もヘッドランプ、ウィンカー、キルスイッチ、ホーンなどすべて正常に作動し、駆動的な項目に関する作業工程はほとんどを終了。自作の偵察用オートバイXLR250Rの完成までホントにあと一歩の所まできてしまった。

 

外装用のプラパーツを取り付けると、あとは自衛隊用の特殊外装を取り付るだけだ。この特殊外装は取り付けるのは大変な力仕事になってしまった。ナット穴の位置関係がとてもアバウトなのである。穴の位置を力技で合せてナットを挿入する作業は、気温が30℃近くある場所で、体中の汗を吹き出しながら作業を続けた。この取付作業で、リアフレームとキャリア、エンジンガード、通信機用の専用ラックを装着した。

いよいよ最後になったハンドル周りの作業に入る。ケーブル類の撓みを見ながら、仮止めしていたパーツをひとつひとつ固定していく。電装品も最後の作動 チェックをしたあと、ランプカバーと特殊外装のライトガードを装着した。ハンドルを左右に大きく振ってみて、ケーブル類に無理な力で捩れていないかを確認 し、ハンドル周り工程も終了。これで完成!ここに完成した!妄想の中でしか存在し得なかった偵察用オートバイXLR250Rが、今目の前にのそ勇姿を俺に見せ付けている。今、長年の妄想がひとつ現実になった瞬間だ。

 

そうなのだ!「自衛隊(仕様) 偵察用オートバイXLR250R」が一応完成したのだ。

偵察用オートバイとしての自作XLR250R

早速完成した偵察用オートバイXLR250Rを、近所のバイク屋さん”濱田ガレージ”に搬入して細部をチェックしてもらう。2時間くらいで各部のチェックが終了し、走行性や安全性に問題なしとの報告頂いた。早速、近所にある広めの駐車場に偵察用オートバイXLR250Rを持ち込んで、駐車場デビューを果たした。エンジンを大きく吹かし、急加速、急減速を繰り返し車体に無理な力をかけてみる。やっぱり旧型の偵察用オートバイXL250Sとはまったく違う別物のバイクだった。

去年レポートした偵察用オートバイXL250Sと比較してみると、大きく進化している点がいくつも見られた。あの怖いまでのブレーキの甘さは十分に改善され、十分に日常の足に耐える制動力を発揮してくれる。直進走行時の安定性も抜群で、偵察用オートバイXLR250Rの方が優れている。偵察用オートバイXL250Sの後継機種なのだから、当然で当たり前の話なのだが、苦労して組み立てた分の感動は、基本性能を何倍も大きく感じさせてくれた。

偵察用オートバイXL250Sと自作偵察用オートバイXLR250Rを比較してみた。

バイクとしての性能では、新しいXLR250Rの方が断然良いと言える。が、低い車体の偵察オートバイXL250Sも、軍用としてのスタイル”野暮ったさ”の雰囲気は魅力的だ。自作した偵察オートバイXLR250Rはフォルムが洗練されていて、この「軍用としての野暮ったさ」感はあまり感じられない。車体の塗装の新しさが、そう感じさせるのかも知れない。

XLRの基本スペック;

型式
MD20
全長(m)
2.165
全幅(m)
0.860
全高(m)
1.210
軸距(m)
1.430
最低地上高(m)
0.285
シート高(m)
0.860
車両重量(Kg)
121
乾燥重量(Kg)
111
乗車定員(人)
2
燃費(km/L)
50.3(50km/h定地走行テスト値)
エンジン型式
MD17E・空冷4サイクルOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3)
249
内径×行程(mm)
73.0×59.5
圧縮比
9.3
最高出力(PS/rpm)
28/8,500
最大トルク(Kg-m/rpm)
2.5/7,500
始動方式
キック
点火方式
無接点式CDI
燃料タンク容量(L)
9.0
変速機形式
常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ
3.00-21-4PR
タイヤサイズ
4.60-18-4PR
ブレーキ形式
油圧式ディスク
ブレーキ形式
機械式リーディングトレーリング
懸架方式
テレスコピック(円筒空気バネ併用)
懸架方式
スイングアーム(プロリンク)
フレーム形式
セミダブルクレードル

馬力があるためか、特殊装備をすべて取り付けて車体重量が増加しているのにも係わらず、加速はとてもパワフルだ。偵察オートバイXL250Sでは非常に鈍い加速だったので、大きな改善点だろう。市販車のXLRと遜色なく加速し、そして時速85キロを超えた時点で速度警告ランプが点灯。そして時速85キロからの急ブレーキも市販車よりは少し制動距離が少し多めではあったが、特殊装備類の重量を感じさせないキビキビとした動作を見せている。

一連のテストをした後、一般道で実走行してみるが、リアフレームがあるおかげでスリ抜けができない以外はまったく問題はない。絶好調の偵察オートバイXLR250R(自作)だ。

分解から組立をすべてを自分でやってみて

妄想の自衛隊バイク自作計画の発動から約10ヶ月(下準備7ヶ月、実作業3ヶ月)、ここにすべての作業工程を終了して自作偵察用オートバイXLR250Rが完成した。すべての作業をまったくの素人が行ったとしても、ここまで出来る事を証明した感じになってしまった。ま、だれに証明するものでもないのだが、自分自信で満足の出来るレベルまでやり通した事は、素直に嬉しい思いでいっぱいだ。

ではあるが、やはりマニアな自分としては、自作した偽物ではなく、「本物の自衛隊のXLR」が欲しくなっている今日この頃である。マニアの物欲にはホント際限がない。

実質のレストア作業時間は一日約2時間、仕事の合間や仕事をサボって実施していた。これが週4日程のペースで作業していたので、初めのレストア計画よりは、少ない時間で完成に漕ぎ着けている。むしろ、レストアの下準備に、より多くの時間が必要だった。分解と塗装、組み立ての作業は3月後半から6月始めの間で終了。途中モチベーションが下がって手をつけていない時間もあったり、出張で作業ができない時間もあったので、それらを考慮すればやはり予定よりも幾分かは早く完成している事になる。

作業が非効率的だったのは、本文でも触れているが、自分のポカミスでネジ類を分類せずに一つの箱に入れてしまった点だ。いちいちネジのサイズを測ってからでないと使用できない状態にしてしまった事は、作業時間を無駄に、そして異常に長くしてしまった。

塗装の下地塗装には特に時間をかけて作業しているが、その甲斐あって塗装の仕上がを満足のいく出来栄えにする事ができた。下地処理を如何に丁寧に行うかで、塗装で出来栄えは大きく変わってしまう事を身を持って知ることができた。

今回のレストア作業最大の立役者は、HONDAが出版しているXLR用のサービスマニュアルとパーツリスト。この2冊がないと今回の偵察用オートバイXLR250Rの完成はまず無かったと断言できる。

サービスマニュアルは組み立て説明書のようなもので、分解の方法や組み立ての工程、ポイントなどが詳しく書かれたマニュアルである。

パーツリストは、ネジのサイズやパーツの形状、部品番号などが記載されており、ここに書かれている番号で純正パーツを注文する事ができるリストである。このリストは、すべてのネジを混合して保管てしまった自分には無くてはならいものになった。

これから自衛隊バイクを自作しようと考えている人は、この2冊は必ず入手しておく必要がある。残念ながら、これらのマニュアル類は既に絶版との事なので、必要であれば早めの購入を強くお勧めする。

今回の自作偵察用オートバイXLR250Rのレストア企画において、俺自身がした事と言えば、インターネットで調べて、注文して、サービスマニュアルに沿って組立作業しただけである。これは誰にでも十分可能だし、自分のハッピーな妄想を実現するにあたって、それほど大した努力もなく出来てしまった稀なケースだ。俺の無計画な妄想レストア計画を終始手伝ってくれたMATT氏に感謝を込めてここに謝辞の述べたい。

これから自衛隊バイクに乗りたい!作りたい!と思ってこのページを読んでくれている皆へ一言アドバイスがあるとすれば、以下の励ましの言葉を送りたい。

 

「やってやれないことはない」

 

なんか学校の先生みたいだが、そんな偉そうなものではない。私自身はこの偵察用オートバイ仕様XLR250Rを作るまでは中型免許すらもっていないほど、バイクに対してはなんの知識はなかった。それが、見よう見まねでなんとか分解と組み立てをする事ができた。これは私自身というよりも、俺の自分勝手な妄想の為に貴重な時間を割いて手伝ってくれた多くの人々や、サービスマニュアルやパーツリストの支えによるところがほとんどだ。いや、すべてと言っても過言ではない。

自衛隊バイクの入手は困難だが、特殊なパーツはヤフーオークションで販売されている場合もあるし、どうしてもパーツが入手できなければ、町工場に相談することで大概の問題は解決する。私も手伝える事があれば微力ながらお手伝いするので、是非頑張って欲しい。今度は私が皆さんを助ける番です。

自衛隊バイクに興味のあるキミへ!偵察オートバイの基本情報から入手方法のまとめ

偵察オートバイXLR250Rのレストア総予算と関連情報

今回の偵察オートバイを自作するにあって、購入した工具や必要資材、自衛隊関連のパーツや利用サービスなども含めて一覧にしておいた。

1)予算関連(工具/設備)

名    称
価 格
備  考
エアーコンプレッサー
15800
エアーツールセット(インパクトレンチなど)
5800
エアーツール(塗装用)
2300
夜間作業用投光器
3800
バイク作業台(バイクリフト)
9800
工具セット
2500
特殊なサイズのレンチなど
2400
紙やすりなど
300
電動ドリルの刃(9.5mm)
1120
簡易サンドブラスター
7500
結局使用していない
トルクレンチ
4500
溶接機(100V/200V)
12000

2)ハイク用パーツ(純正及び補修用含む)

名    称
価 格
備  考
交換用ボルト・ネジ
1200
D.I.D 428V2130LEチェーン
6100
純正部品
スプロケット(前後)
5500
純正部品
ブレーキレバー
910
純正部品
クラッチレバー
910
純正部品
スロットルケーブル(A.B)
3120
純正部品
ガスケット
520
純正部品
キルスイッチ
2330
純正部品
クラッチケーブル
1300
純正部品
オイルフィルター
600
エンジンオイル
2800
2.0L
サービスマニュアル
2800
パーツリスト
1200

3)自衛隊用外装部品

名    称
価 格
備  考
タンク(OD)
程度はよい。利用可
リアフレーム左右(OD)
溶接再生で利用可
エンジンガート(OD)
溶接再生で利用可
ライトガード(OD)
利用可
サイドカバー(OD)
利用可
リアキャリアASSY(OD)
利用可
無線機ホルダーラック(OD)
利用可
シート(Black)
欠損あり。利用可
ホイール前後(OD)
歪みの為、利用不可
フロントブレーキカバー
利用可
マフラー
利用可
エイゾーストパイプ
利用可
ナックルガード左右(OD)
利用可
上記THE兵舎より一括購入
120.000
 

灯火管制用ランプ
2500
別途購入(新品)
無線機用リモートスイッチ
3100
別途購入(中古品

4)その他調達物資及消耗品

名    称
価 格
備  考
民生用XLR250R(MD20-100****)
55000
陸自用と同型
自賠責保険
9700
1年間
ナンバー交付料金
520
リアフレームベース(左右)
25000
オーダーメイド
フレーム補強用レール(左右)
7000
オーダーメイド
バイクメンテナンス(バイクショップ)
5000

5)利用したサービス(順不同)

名    称
備  考
株式会社 北島商会
純正パーツ
桜井工機株式会社 株式会社
機械加工/パーツ製造
株式会社 ストレート
専用工具、ツールなど
濱田ガレージ
最終点検
THE兵舎
〒963-8013 福島県郡山市神明町8-13
TEL024-932-3115 FAX024-925-4410
自衛隊用XLRジャンク

 


自作偵察オートバイXLR250Rの概要

本製品データー実銃データー
名  称HONDA XLR250R(MD20)
メーカー本田技研工業株式会社
主要材質耐衝撃性ABS,Zn,Fe
銃身長
全  長2.165mm
重  量123Kg + 装備パーツ
口  径
初  速
パワー値71馬力
照準具
パワーソース液体燃料(ガソリン)
給弾方式
発射速度最高速度120㎞/h
発売日不明
撮影日2005年6月10日
購入店通信販売でパーツを収集
実売価格製造価格 約330,000円(工具一式等含む)
ポイントスター
★☆☆☆☆

 

外部リンク

Norick’s World (偵察オートバイXLR250Rの日記があります。)

the 世界のレーション保管庫にようこそ(ページの最後の方にXLR250RとKLX250のレストア日記があります。)

偵察用オートバイ(ウィキペディア)

 

ダウンロード

その他のファイルは、ダウンロードページから入手する事ができます。

レポート修正履歴

2015年8月30日 ファイルのダウンロードを再開しました。
2015年8月18日 レイアウトの一部を修正しました。
2013年5月10日 記事の内容を一部修正しました。
2020年3月6日 記事の内容を一部修正しました。
2020年5月18日 記事の内容を一部修正しました。

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