自衛隊偵察用オートバイと民間型オートバイの外見上の違いとは?

自衛隊偵察用オートバイは、基本的に民間型オートバイを流用して製造されているもので、車両としての性能は民間型オートバイと差は、ほとんどないと考えていいだろう。しかし、外見的には自衛隊専用の特殊装備などが装着されているので民間型オートバイとはまったく違う印象を受けるのではないだろうか?では、偵察用オートバイのどこが民間型と違っているのだろうか?このページではその辺りを簡単に理解して頂けるように外見上の違いをピックアップしてある。偵察用オートバイ向けの追加改造は概ね以下の箇所となっている。

(1)転倒時に偵察隊員の体を守る大きなリアガード

偵察用オートバイは隊員を転倒から守る為のガード類が装着されているので、民間型オートバイよりも余計な負荷がフレームにかかる事になる。このフレーム部分にかかる負荷を軽減して強度を確保する為に、フレームの中央部部分に補強材パーツが溶接されている。ホンダXLR250Rなどでは一見して判別できる ような大きめパーツだが、カワサキKLX250ではとても小さなパーツが目立たないように溶接されている。

↑偵察隊員と車体を転倒から守り、偵察行動の継続性を高めるリアガード(上:XLR250R 下:KLX250)

(2)偵察隊員の両足を飛び石や障害物から守るレッグガード

足元のレッグガード装着用には、フレーム前方部分に専用のネジ穴が開けてある。余談ではあるが、カワサキKLX250をレストア作業には、このネジ穴がぴったりと合わなかったので、レッグガード取り付けに大変苦労している。割りといい加減なサイズと位置に穴あけ加工が施されており、しなりや遊びがまったくない頑丈な鋼鉄製のレッグガードの装着には一苦労だった。

↑障害物や飛び石などから偵察隊員を守る印象的なレッグガード(上:XLR250R 下:KLX250)

(3)自衛隊用通信機を搭載する為の無線機用ラック

無線機搭載用ラックは自衛隊偵察用オートバイ専用パーツである。年代によって採用されている無線機の形状が異なる為、ホンダXLR250Rとカワ サキKLX250では無線用ラックの形状や大きさも若干異なる。現状で手元に確保できている無線機用ラックは、ホンダXLR250R用のものだけだ。カワサキKLX250用の無線機用ラックをあちこちで探してはいるが、未だに発見入手はできていない。

↑自衛隊用無線機を偵察用オートバイに取りけるための専用キャリアー(写真はKLX250R用)

(4)民間型とは異なる大きなキャリアー部分

リアキャリアーは民間オートバイに搭載されているものとは異なり、自衛隊専用のキャリアーが搭載されている。民間型オートバイ用よりも幅広く作られていて、大きめのダンボールなどでも余裕で搭載できる平面を有している。自衛隊用オートバイXLR250Rのキャリアーにはスーパーカブとそっくりのキャリアーが使用されている。

↑民間型とは違がって大きなサイズのキャリアー部分(上:XLR250R 下:KLX250)

(5)夜間作戦時の灯火管制用ライト(偵察部隊用オートバイ向け)

自衛隊で配備されていたホンダ社製偵察用オートバイでは、2つのタイプの偵察用オートバイが配備されていた。偵察部隊に配備される偵察用オートバイと、その他の部隊に配備される偵察用オートバイである。その外見上の差は「灯火管制用ライトとそれに伴うスイッチ類」の有無で、メインハーネスもそれに合わせた 特殊なものが使用されていた。

この異なった2つの種類の偵察用オートバイの配備については、ホンダ社製の偵察用オートバイのみに見られる現象で、現行のカワサ キKLX250では、すべての部隊に灯火管制ライトが装着された偵察用オートバイが配備されているようである。

↑灯火管制用ランプ(BOライト)とその制御スイッチ(写真はKLX250)

(6)ヘッドランプを障害物から守るライトガード

ヘッドライト用のガート類は、障害物からライトを保護するためのガードで、レンズの部分には金網が取り付けされていて飛び石などからヘッドライトを保護する役割を担っている。

↑偵察用オートバイの顔とも言うべきのライトガード類(上:XLR250R 下:KLX250)

(7)自衛隊専用のツールボックス(工具箱)

偵察用オートバイには、車両後部に黒色プラスティック製のツールボックスが設置されている。内部は上下で2層の小部屋に分かれてり、当方に払い下げられた車両には予備工具と掃除用と思われる布などが収納されていた。

このツールボックは、自衛隊用パーツリストの品番でバイクメーカーに注文した場合は「防衛庁指定部品」との理由で、一般のパーツ取扱い店からではオーダーする事ができない。しかし、北米車用のパーツリスト番号であれば購入できるとの未確認情報がある。

ちなみにこのツールボックスは、ホンダやカワサキが製造しているものではなく、ツールボックス自体をパーツとして他社から供給を受けている。

↑払下げを譲り受けた時には、専用工具類とクリーニング用の布が収納されていた(写真はKLX250)

(8)業務用OD(オリーブドラブ色)による塗装

車体全体はオリーブドラブ色で塗装されていて、メーカー名などのプリントやシールなども車体カラーに合わせた色調のものが使用されている。自衛隊用塗料は一般では購入する事はできないが、塗料専門店であれば塗膜の断片を持ち込むことで調色・製造してくれる。

また、スプレー式塗料であれば、自衛隊駐屯地で開催される駐屯地祭のときに、敷地内にある売店で購入する事ができる。ただし、このスプレーは車体用塗料とは少し色合いが異なっており、タミヤから発売されているOD色(陸上自衛隊)のほうが偵察用オートバイのカラーが近かった。


↑自衛隊駐屯地内の売店で購入できる塗装スプレー。

これらの改造を民間のオートバイに追加加工する事で、偵察用オートバイのあの「無骨」な雰囲気が作り上げられている。このページを読んで頂ければ、ざっくりと民間オートバイと自衛隊偵察用オートバイの外見上の違いをある程度はお解り頂けるのではないだろうか?

下の写真のカラフルな民間型オートバイが、このページに記載されているような装備を追加されて私達のよく知る「偵察用オートバイ」へと変貌を遂げていく。

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↑それぞれのオートバイの改造前・改造後の変化(左:XL250S 中央:XLR250R 右:KLX250)

さて、ここでひとつご注意頂きたいのは、このコンテンツで参考写真として使用している「ホンダXLR250R」は自衛隊 偵察用オートバイではない。

普通のバイク屋さんで売っているXLR250Rを自衛隊カラーに塗装して、買い集めた偵察用オートバイのパーツを取り付けた「仕様」である事をご留意頂きたい。自作の偵察オートバイXLR250についてご興味がある場合はこちらのページで苦難の道のりを読んでもらえると嬉しい。

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